山田研の研究内容

カルコパイライト系薄膜太陽電池

Cu(In1-xGax)Se2系太陽電池(CIGS太陽電池)は薄膜太陽電池の中では最も変換効率が高く、長期信頼性も実証されていることから、次世代太陽電池として有力視されています。CIGSはCuInSe2とCuGaSe2との混晶であり、多結晶Si太陽電池に匹敵する変換効率20%以上が複数の研究機関で報告されています。また、CIGSは未知の部分が多く残されている材料であり、今後の研究に数多くの期待が集まっています。本研究室では、このCIGS薄膜の基礎物性の解明及びCIGS薄膜太陽電池の高効率化を目的として研究をおこなっています。

1. 界面制御によるCIGS太陽電池の高効率化

CIGS太陽電池太陽電池の高効率化のためには、n型層/CIGS界面特性の制御が重要である。異種材料の界面には界面欠陥が存在しキャリアの再結合中心となるため、界面付近のバンドアライメントを制御してキャリア再結合を抑制する必要がある。山田研ではCIGSの表面にCuの組成の小さなCu欠損層を挿入することにより、価電子帯オフセットを増加させ、キャリア再結合を抑制する技術を研究しています。

2. H2SフリープロセスによるCuInS2太陽電池の実現

カルコパイライト系薄膜太陽電池の更なる高効率化手法として、タンデム太陽電池の検討が行われている。一般的なCIGS太陽電池の光吸収層のバンドギャップは1.1 eV程度であるため、バンドギャップ1.5-1.6 eV程度の光吸収層を有する太陽電池を組み合わせることにより、理想的なタンデム太陽電池の形成が可能となる。しかし、上記のようなバンドギャップを有するカルコパイライト系薄膜太陽電池の変換効率は十分ではない。そこで、バンドギャップ約1.5 eVを有するCuInS2(CIS)太陽電池を毒性の強い硫化水素(H2S)を用いずに形成する手法を検討している。

CIGS太陽電池をボトムセルに用いたタンデム太陽電池

タンデム太陽電池の構造例

薄膜太陽電池の高効率化のため、ボトムセルにCIGS太陽電池を用い、トップセルにペロブスカイト太陽電池を用いたタンデム太陽電池が注目されている。タンデム太陽電池の形成においては、トップセルとボトムセル間のトンネル再結合層が重要である。太陽電池の構造をシンプルにするためには、CIGS太陽電池のn型層とペロブスカイト太陽電池のp型層を用いてトンネル再結合層を形成することが好ましい。山田研では、CuIをp型層に用いたトンネル再結合層および2つの太陽電池の接合手法の検討を行っている。