宮島グループの研究内容
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- 水中、長距離エネルギー伝送を目指した青色光光無線給電用受光器(材料開発、デバイス開発)
- 超低ダメージスパッタリング技術とその応用(応用例:シリコン太陽電池、金属膜)
- 銅酸化物材料の高品質化と環境負荷の小さな太陽電池への応用
- 量子切断型蛍光体薄膜の形成と評価およびその応用(LSC型太陽電池)
● 光無線給電用受光器 (from 2017)
移動体やIoT機器、水中デバイスへのコードレスな電力供給を実現する 光無線給電(Optical Wireless Power Transmission: OWPT)技術の核となる、次世代受光器(Photovoltaic power converter)の研究を推進しています。特に、エネルギー密度の高い青色レーザー等の単色光を効率良く電力に変換するため、オール無機ワイドギャップペロブスカイト(CsPbBr3系)を中心とした革新的な材料探索を推進しています。材料科学とデバイス物理の両面から、低ダメージスパッタ法による高品質な界面制御や窒化物半導体とのヘテロ接合技術を駆使し、理論効率約70%を有する究極の青色光用受光器の実現を目指しています。光吸収材料の基礎的な物性解明から実用的なデバイス設計までを一貫して行っています。
(1)ワイドギャップペロブスカイト材料の高品質化
光無線給電の光源にはレーザーやLEDなどの単色光源を用いるため、受光器は単色光において最大の変換効率を実現できるような設計を行う必要がある。受光器の変換効率は使用する波長により異なる。受光器はその光吸収層のバンドギャップより大きなエネルギーの光を電気エネルギーに変換できるが、光エネルギーが大きくなるほど励起されたキャリアの余剰エネルギーが熱として失われるため、光吸収層のバンドギャップに近いエネルギーの光を用いた場合に変換効率が最大となる。また、光吸収層のバンドギャップエネルギーに近いエネルギーの光を用いる場合、受光器の理論変換効率(デバイス構造や使用する材料が理想的であるとした場合)は、光吸収層のバンドギャップエネルギーが大きいほど変換効率が大きくなる。つまり、バンドギャップの大きなワイドギャップ材料を用いた受光器が必要となる(ただし、同様にワイドギャップ材料を用いた光源(短波長光源)の高効率化も同時に必要になる)。宮島研では、太陽電池材料として近年注目を集めているペロブスカイト材料に着目し、その1つである CsPbBr3 の光電変換特性の評価および高品質化を進めている。
(2)ワイドギャップペロブスカイト材料を用いた受光器
右図はワイドギャップペロブスカイト材料の1つであるCsPbBr3を光吸収層に用いた受光器の構造です。電子輸送層には一般的なペロブスカイト太陽電池で用いられるTiO2、正孔輸送層にはP3HTを用いた検討を進めていますが、CsPbBr3のバンドラインナップに適した材料の探索も進めています。
TiO2およびP3HTを用いたデバイスを作製し、光電変換特性を示すことをこれまでに確認しています。光吸収層であるCsPbBr3の組成調整がデバイス特性に大きな影響を与えることを明らかにしています。
成果の一例:
Murata et al., AIP Adavnce 10, 045031 (2020)
Aso et al., Jpn. J. Appl. Phys. 62, SK1045 (2023)
Tan et al., Physica Status Solidi A 2400437, (2024)
Watanabe et al., Physica Status Solidi rrl 2500209 (2025)
● 高効率結晶Si太陽電池のSiH4フリープロセス (from 2012)
近年、太陽光発電の導入量が急速に伸びています。その伸びをけん引するのは、単結晶シリコン太陽電池です。単結晶シリコン太陽電池の普及に伴い、その製造コストは著しく低下しつつあり、太陽光発電コストに占める太陽電池の製造コストの割合は急速に低下しています。このような状況では、太陽光発電のコスト低減には、太陽電池製造コスト低減とともに、高効率化が非常に重要になります。高効率化により面積当たりの発電量を増加させることで、太陽電池以外のコスト(BOSコストなど)を低減することが可能になります。現在のところ、主流となる単結晶シリコン太陽電池の構造はPERC型と呼ばれる裏面にポイントコンタクト構造を採用した構造ですが、変換効率向上の限界に近付きつつあります。更なる変換効率向上のためには、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)を用いたヘテロ接合型やトンネル酸化膜と高濃度にドーピングしたポリシリコン層を用いるパッシーベーションコンタクト型(TOPCon型)などが検討されていますが、PERC型に比べると製造コストが増加するという問題があります。そこで、我々のグループでは、高効率単結晶シリコン太陽電池の低コスト化技術、特に爆発性・毒性ガスを使用しないプロセスの研究を行っています。
(1)対向ターゲットスパッタ法による高品質な太陽電池用アモルファスシリコン表面パッシベーション膜の作製
高効率単結晶シリコン太陽電池は一般的な熱拡散によるpn接合ではなく、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)を用いたヘテロ接合によるpn接合を用いています。このa-Si:H層の作製には比較的低温(200℃程度)で高品質な薄膜の製膜が可能な、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法や触媒化学気相堆積(Cat-CVD)法などが用いられています。これらの手法では、プラズマや加熱した金属触媒体によりシリコンを含むモノシラン(SiH4)ガスを分解し、ラジカルを生成します。このラジカルが基板表面に到達することで膜が形成されます。また、p型およびn型にドーピングを行う場合には、ボロンやリンを含むガス(B2H6やPH3など)を添加します。SiH4ガスは非常に爆発性が強いガスとして知られており、B2H6およびPH3ガスは毒性の強いガスとして知られています。これらのガスは特殊高圧ガスに指定されており、ガスが外に漏れることがないように、除害設備や安全のための設備の設置が必要となり、コスト増加の原因となります。
そこで、上記のガスを使用しない手法を検討しています。具体的にはスパッタ法を使用します。スパッタ法は、Arなどの不活性ガスをプラズマ放電によりイオン化し、イオンをターゲット(製膜したい材料の板)に衝突させ、飛び出してきた原子を基板に堆積させる手法です。この手法を用いてa-Si:Hを作製する場合には、Arに数%の水素を添加したガスとシリコンターゲットを用いることができるため、爆発性や毒性の強いガスを使用する必要がありません。ただし、スパッタ法は太陽電池用のa-Si:Hの製膜にはほとんど用いられていません。その原因の1つとして、スパッタ製膜時に生じるシリコン基板(もしくは膜/基板界面)へのダメージがあります。このダメージは主にターゲットがスパッタされる際に発生する二次電子によるものと考えられます。このダメージを抑制するために、本研究室では対向ターゲットスパッタに注目しています。これまでに、対向ターゲットスパッタにより、良質な結晶シリコン太陽電池用a-Si:Hパッシベーション膜の形成に成功しています。現在は、パッシベーション効果の更なる改善のための検討を進めています。
成果の一例:
Shiratori et al., Applied Physics Express 11 031301 (2018)
Faris et al., Progress in Photovoltaics: Research and Applications 28 971 (2020)
Shiratori et al., IEEE Journal of Photovoltaics 10, 927 (2020)
Li et al., Solar RRL 8, 2400045 (2024)
(2)SiH4フリープロセスによるTOPCon型太陽電池の作製プロセス
TOPCon型太陽電池は高効率なSi太陽電池構造として近年注目を集めています。しかし、その形成プロセスにおいては爆発性の高いSiH4や毒性の強いPH3などのガスを使用してアモルファスシリコンもしくはポリシリコンを形成する必要があります。そこで対向ターゲットスパッタ法により低ダメージでこれらの膜を形成することにより、SiH4フリーで高効率太陽電池を作製することを目指しています。
成果の一例:
Yamaguchi et al., Japanese Journal of Applied Physics 62 SK1024 (2023)
使用している装置
太陽電池用水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)パッシベーション膜・金属酸化物エミッタ層・透明導電膜の作製に使用する対向ターゲットスパッタ(FTS)装置を以下に示します。FTS装置は、ロードロックおよびメインチャンバーから構成されており、メインチャンバーの3つの側面に対向ターゲットプラズマ源が接続されており、メインチャンバー中央に設置された基板設置部を回転させることにより、メインチャンバーから取り出すことなく、3つの異なる材料を連続して製膜することが可能です。また、比較用に通常のプラズマCVD装置も使用しています。このプラズマCVD装置は、ロードロックと基板搬送用ロボットチャンバー、3つのプラズマCVDチャンバーおよびRFスパッタチャンバーから構成されており、p型、i型、n型のシリコン系薄膜、透明導電膜、金属酸化物の製膜が可能です。
● 銅酸化物材料の高品質化と環境負荷の小さな太陽電池への応用
作成中
(1)作成中
作成中
(2)作成中
作成中
● 量子切断型蛍光体とその応用 (from 2025)
量子切断型蛍光体(高エネルギーの紫外〜青色光1光子を低エネルギーの近赤外光最大2光子に変換する蛍光体)薄膜を実現し、それを平板型太陽光集光器Luminescent Solar Concentrator(LSC)型太陽電池に応用することを目的とする研究です。2050年のカーボンニュートラル達成に向け、脱炭素化の加速が求められています。特に都市部では建物からのエネルギー消費およびCO2排出の割合が大きく、建築分野における対策が重要です。日本は災害が多く,建物単位でのエネルギー自給によるレジリエンス向上も求められています。このような背景から、未活用である窓面への発電機能の付加を目指しています。
(1)量子切断型蛍光体を用いたLSC型太陽電池の理論検討
作成中
(2)量子切断型蛍光体の薄膜の作製
LSCは1970年代に提案された技術ですが、当初は有機蛍光体の光劣化や再吸収損失などの課題に加え、シリコン太陽電池の低価格化により研究は一時的に停滞しました。しかし近年、量子ドットやペロブスカイトなどの新規材料の登場により性能が向上するとともに、建築分野における透明発電デバイスへの需要の高まりを背景として、再び注目が集まっています。本研究室ではこれまで、光無線給電受光器用材料としてCsPb(Br1-xClx)3の開発を進めてました。本研究では、この材料基盤を活かし、Yb3+を添加することで量子切断特性を付与した蛍光体により、量子切断型太陽光集光器(QC-LSC)の実現を目指しています。この近赤外光は単結晶シリコン太陽電池が高い外部量子効率を有する波長域に対応しています。.また、人間の視感度が低い波長域のみを利用するため、高い可視光透過率が期待されています。