宮島研の研究内容

1. 高効率結晶Si太陽電池のSiH4フリープロセス (from 2012)

 近年、太陽電池の導入量が急速に伸びています。その伸びをけん引するのは、多結晶シリコン太陽電池を主とする結晶系シリコン太陽電池です。結晶系シリコン太陽電池の普及に伴い、その製造コストは著しく低下しつつあり、太陽光発電コストに占める太陽電池の製造コストの割合は急速に低下しています。このような状況では、太陽光発電のコスト低減には、太陽電池製造コスト低減とともに、高効率化が非常に重要になります。高効率化により面積当たりの発電量を増加させることで、太陽電池以外のコスト(BOSコストなど)を低減することが可能になりますが、一般的に高効率な結晶シリコン太陽電池の製造コストは一般的な多結晶シリコン太陽電池のコストよりも高くなります。そこで、我々のグループでは、高効率単結晶シリコン太陽電池の低コスト化技術、特に爆発性・毒性ガスを使用しないプロセスの研究を行っています。

(1)対向ターゲットスパッタ法による高品質な太陽電池用アモルファスシリコン表面パッシベーション膜の作製

 高効率単結晶シリコン太陽電池は一般的な熱拡散によるpn接合ではなく、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)を用いたヘテロ接合によるpn接合を用いています。このa-Si:H層の作製には比較的低温(200℃程度)で高品質な薄膜の製膜が可能な、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法や触媒化学気相堆積(Cat-CVD)法などが用いられています。これらの手法では、プラズマや加熱した金属触媒体によりシリコンを含むモノシラン(SiH4)ガスを分解し、ラジカルを生成します。このラジカルが基板表面に到達することで膜が形成されます。また、p型およびn型にドーピングを行う場合には、ボロンやリンを含むガス(B2H6やPH3など)を添加します。SiH4ガスは非常に爆発性が強いガスとして知られており、B2H6およびPH3ガスは毒性の強いガスとして知られています。これらのガスは特殊高圧ガスに指定されており、ガスが外に漏れることがないように、除害設備や安全のための設備の設置が必要となり、コスト増加の原因となります。  そこで、上記のガスを使用しない手法を検討しています。具体的にはスパッタ法を使用します。スパッタ法は、Arなどの不活性ガスをプラズマ放電によりイオン化し、イオンをターゲット(製膜したい材料の板)に衝突させ、飛び出してきた原子を基板に堆積させる手法です。この手法を用いてa-Si:Hを作製する場合には、Arに数%の水素を添加したガスとシリコンターゲットを用いることができるため、爆発性や毒性の強いガスを使用する必要がありません。ただし、スパッタ法は太陽電池用のa-Si:Hの製膜にはほとんど用いられていません。その原因の1つとして、スパッタ製膜時に生じるシリコン基板(もしくは膜/基板界面)へのダメージがあります。このダメージは主にターゲットがスパッタされる際に発生する二次電子によるものと考えられます。このダメージを抑制するために、本研究室では対向ターゲットスパッタに注目しています。これまでに、対向ターゲットスパッタにより、良質な結晶シリコン太陽電池用a-Si:Hパッシベーション膜の形成に成功しています。現在は、パッシベーション効果の更なる改善のための検討を進めています。

成果の一例:Shiratori et al., Applied Physics Express 11 031301 (2018)

(2)金属酸化物をエミッタ層として用いたシリコンヘテロ接合太陽電池

作成中

使用している装置

太陽電池用水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)パッシベーション膜・金属酸化物エミッタ層・透明導電膜の作製に使用する対向ターゲットスパッタ(FTS)装置を以下に示します。FTS装置は、ロードロックおよびメインチャンバーから構成されており、メインチャンバーの3つの側面に対向ターゲットプラズマ源が接続されており、メインチャンバー中央に設置された基板設置部を回転させることにより、メインチャンバーから取り出すことなく、3つの異なる材料を連続して製膜することが可能です。また、比較用に通常のプラズマCVD装置も使用しています。このプラズマCVD装置は、ロードロックと基板搬送用ロボットチャンバー、3つのプラズマCVDチャンバーおよびRFスパッタチャンバーから構成されており、p型、i型、n型のシリコン系薄膜、透明導電膜、金属酸化物の製膜が可能です。

使用している装置の写真
対向ターゲットスパッタ(FTS)およびプラズマ気相化学堆積(PECVD)装置

2. 光無線給電用受光器 (from 2017)

 ワイヤレス給電技術として電磁誘導や磁界共振方式が実用化されつつある。小型の機器ではQi規格に基づいた製品が販売されており、電気自動車などの大型システムの実証試験も進んでいる。ただし、これらの手法では遠距離への電力伝送は比較的難しい。遠距離への電力伝送方式としてマイクロ波方式があるが、電磁波の干渉が問題になるような場合には使用が難しい。遠距離への電力伝送が可能かつ、電磁波干渉の影響のない手法として、光を用いた無線給電手法が存在する。レーザーやLEDなどの光源と受光器(太陽電池)を用いてエネルギー伝送を行うこの手法を光無線給電(Optical Wireless Power Transmission : OWPT)と呼ぶ。 ただし、OWPTのエネルギー伝送効率はまだ低いのが現状である。なお、OWPTのエネルギー伝送効率は、光源の電気エネルギー/光エネルギー変換効率、光源-受光器間の伝送効率、受光器の光エネルギー/電気エネルギー変換効率の積で決まる。宮島研では、OWPTによる電力伝送効率の向上の可能性を検討するために、ワイドギャップ半導体を用いた受光器の研究を進めている。  

(1)ワイドギャップペロブスカイト材料の高品質化

光無線給電の光源にはレーザーやLEDなどの単色光源を用いるため、受光器は単色光において最大の変換効率を実現できるような設計を行う必要がある。受光器の変換効率は使用する波長により異なる。受光器はその光吸収層のバンドギャップより大きなエネルギーの光を電気エネルギーに変換できるが、光エネルギーが大きくなるほど励起されたキャリアの余剰エネルギーが熱として失われるため、光吸収層のバンドギャップに近いエネルギーの光を用いた場合に変換効率が最大となる。また、光吸収層のバンドギャップエネルギーに近いエネルギーの光を用いる場合、受光器の理論変換効率(デバイス構造や使用する材料が理想的であるとした場合)は、光吸収層のバンドギャップエネルギーが大きいほど変換効率が大きくなる。つまり、バンドギャップの大きなワイドギャップ材料を用いた受光器が必要となる(ただし、同様にワイドギャップ材料を用いた光源(短波長光源)の高効率化も同時に必要になる)。宮島研では、太陽電池材料として近年注目を集めているペロブスカイト材料に着目し、その1つである CsPbBr3 の光電変換特性の評価および高品質化を進めている。

(2)ワイドギャップペロブスカイト材料を用いた受光器

ワイドギャップペロブスカイト材料を用いた受光器の構造

右図はワイドギャップペロブスカイト材料の1つであるCsPbBr3を光吸収層に用いた受光器の構造です。電子輸送層には一般的なペロブスカイト太陽電池で用いられるTiO2、正孔輸送層にはP3HTを用いた検討を進めていますが、CsPbBr3のバンドラインナップに適した材料の探索も進めています。

TiO2およびP3HTを用いたデバイスを作製し、光電変換特性を示すことをこれまでに確認しています。光吸収層であるCsPbBr3の組成調整がデバイス特性に大きな影響を与えることを明らかにしています。