各種太陽電池、光電変換材料、光電変換素子の応用に関する研究を行なっています。


 近年、太陽電池の導入量が急速に伸びています。その伸びをけん引するのは、多結晶シリコン太陽電池を主とする結晶系シリコン太陽電池です。結晶系シリコン太陽電池の普及に伴い、その製造コストは著しく低下しつつあり、太陽光発電コストに占める太陽電池の製造コストの割合は急速に低下しています。このような状況では、太陽光発電のコスト低減には、太陽電池製造コスト低減とともに、高効率化が非常に重要になります。高効率化により面積当たりの発電量を増加させることで、太陽電池以外のコスト(BOSコストなど)を低減することが可能になりますが、一般的に高効率な結晶シリコン太陽電池の製造コストは一般的な多結晶シリコン太陽電池のコストよりも高くなります。そこで、我々のグループでは、高効率単結晶シリコン太陽電池の低コスト化技術、特に爆発性・毒性ガスを使用しないプロセスの研究を行っています。

①対向ターゲットスパッタ法による太陽電池用アモルファスシリコンパッシベーション膜の作製

 高効率単結晶シリコン太陽電池は一般的な熱拡散によるpn接合ではなく、水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)を用いたヘテロ接合によるpn接合を用いています。このa-Si:H層の作製には比較的低温(200℃程度)で高品質な薄膜の製膜が可能な、プラズマ化学気相堆積(PECVD)法や触媒化学気相堆積(Cat-CVD)法などが用いられています。これらの手法では、プラズマや加熱した金属触媒体によりシリコンを含むモノシラン(SiH4)ガスを分解し、ラジカルを生成します。このラジカルが基板表面に到達することで膜が形成されます。また、p型およびn型にドーピングを行う場合には、ボロンやリンを含むガス(B2H6やPH3など)を添加します。SiH4ガスは非常に爆発性が強いガスとして知られており、B2H6およびPH3ガスは毒性の強いガスとして知られています。これらのガスは特殊高圧ガスに指定されており、ガスが外に漏れることがないように、除害設備や安全のための設備の設置が必要となり、コスト増加の原因となります。
 そこで、上記のガスを使用しない手法を検討しています。具体的にはスパッタ法を使用します。スパッタ法は、Arなどの不活性ガスをプラズマ放電によりイオン化し、イオンをターゲット(製膜したい材料の板)に衝突させ、飛び出してきた原子を基板に堆積させる手法です。この手法を用いてa-Si:Hを作製する場合には、Arに数%の水素を添加したガスとシリコンターゲットを用いることができるため、爆発性や毒性の強いガスを使用する必要がありません。ただし、スパッタ法は太陽電池用のa-Si:Hの製膜にはほとんど用いられていません。その原因の1つとして、スパッタ製膜時に生じるシリコン基板(もしくは膜/基板界面)へのダメージがあります。このダメージは主にターゲットがスパッタされる際に発生する二次電子によるものと考えられます。このダメージを抑制するために、本研究室では対向ターゲットスパッタに注目しています。これまでに、対向ターゲットスパッタにより、良質な結晶シリコン太陽電池用a-Si:Hパッシベーション膜の形成に成功しています。現在は、パッシベーション効果の更なる改善のための検討を進めています。



②金属酸化物をエミッタ層として用いたシリコンヘテロ接合太陽電池の作製

作製中


使用している装置

太陽電池用水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)パッシベーション膜・金属酸化物エミッタ層・透明導電膜の作製に使用する対向ターゲットスパッタ(FTS)装置を以下に示します。FTS装置は、ロードロックおよびメインチャンバーから構成されており、メインチャンバーの3つの側面に対向ターゲットプラズマ源が接続されており、メインチャンバー中央に設置された基板設置部を回転させることにより、メインチャンバーから取り出すことなく、3つの異なる材料を連続して製膜することが可能です。また、比較用に通常のプラズマCVD装置も使用しています。このプラズマCVD装置は、ロードロックと基板搬送用ロボットチャンバー、3つのプラズマCVDチャンバーおよびRFスパッタチャンバーから構成されており、p型、i型、n型のシリコン系薄膜、透明導電膜、金属酸化物の製膜が可能です。