クリーンエネルギーとして注目されている太陽電池の研究を40年続けています。



  現在、住宅の屋根についているような結晶シリコン太陽電池は、1954年アメリカのベル研究所の研究者Chapin, Fuller, Pearsonらによって誕生しました。それ以来、研究開発が進められ、その性能は向上し、製造コストも安くなってきたので、近年では太陽電池への期待が高まっております。年生産量は2000年以来、急速に増加しており、その勢いは衰えを知らない状態です。本年からは、国による太陽電池の普及策の一貫として、補助金制度が復活するそうですし、さらなる普及を目指して2010年度からは太陽電池で発電した電気量を通常の電気代の倍額で電力会社に買い取ってもらう制度(フィードインタリフ)も実施される予定です。

  ここでは太陽電池とはどういうものなのか、他の発電方法と何が違ってどういう利点があるのか。そして、どこに欠点があって研究・開発が行われているのかをまとめてみたいと思います。

LinkIconフィードインタリフとは?

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  まずはじめに、太陽電池とはどんなものか簡単にまとめてみたいと思います。短い言葉で太陽電池を説明すると、

・太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換するもの

です。これだけを見ると当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、「太陽光エネルギーを利用する」ということが太陽電池のもっとも重要な特徴となります。電気は現代社会の中で、不可欠なエネルギーです。電気はエネルギーを即座に遠くまで伝送できるので、とても便利です。また、電気を利用した道具、機器も大量にあります。電気エネルギーは現代文明を支える最重要エネルギーとなっています。そのエネルギーが太陽光を当てるだけで作ることができたらなんて便利なのでしょう。

  最近では、化石燃料の資源の枯渇・大気中への二酸化炭素などの放出による大気汚染などの問題に対し、クリーンな再生可能エネルギーが注目されています。再生可能エネルギーとは、再生が可能な自然の無尽蔵なエネルギーを表します。太陽光だけでなく、風力、水力、地熱、潮力(波)などがあげられます。しかし、家庭の屋根にさえ設置可能な太陽光発電に対し、他の発電方法は、地理的な制限がきついために全国・全世界に広めるということは難しいと考えられます。そのため、太陽電池は家庭用の再生可能エネルギーとして注目をされています。

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1.なんていったってクリーン
  やっぱり、太陽電池はこれに尽きるのではないでしょうか?
元々放棄していた光エネルギーを電気エネルギーに変えることができるという点、発電の際に二酸化炭素のような温暖化ガスの発生がない点などクリーンエネルギーとしての性質を十分兼ね備えていると思います。
太陽電池を作るのにもエネルギーが必要であり、その際に二酸化炭素が発生するので、クリーンエネルギーとは言えないのではないかと質問されることがあります。確かに太陽電池を作製するにはエネルギーを必要としますが、そのエネルギーは太陽電池自身で発電するエネルギーで帳消しにすることができます。それではどれくらいの期間、太陽電池を使って発電すればそのエネルギーを取り戻せるのでしょうか。これを表す指標が「エネルギーペイバックタイム」と呼ばれるものです。エネルギーペイバックタイムとは太陽電池を作るのに要したエネルギーと発電にによって得られたエネルギーが同じになるまでにかかる時間のことです。シリコン系の太陽電池ですと下の表のようになります。

 種類
 エネルギーペイバックタイム
 結晶系
 2.4年
 多結晶系
 2.74年
 アモルファス系
 2.1年

  シリコン系では大体2~3年で、消費したエネルギーを補填することが出来るということがわかります。これ以降は純粋にエネルギーを生みだすということになります。従って、2~3年使用すれば、あとは真のクリーンエネルギーとして利用できると言うわけです。市販されている太陽光発電パネルの寿命は20年で設計されているので、エネルギーペイバックタイムに対して十分な時間の余裕があることがわかります。こういったことを知ると太陽電池がいかにクリーンであるかわかると思います。

そのほかにも以下のような長所があります。
2.発電規模を自由に変えられる
3.維持が簡単!
4.蛍光灯などの室内灯においても発電可能
5.燃料電池と組み合わせてエネルギーの備蓄可能

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1.原料の面から

  まずは、原料から考えてみましょう。火力発電や原子力発電は原料に石油や石炭、ウランなどを用いています。これらの原料はいつかは枯渇してしまう有限の資源です。それに対して、現在、多くの太陽電池の原料として用いられているシリコンはどうでしょう?シリコンというのは、二酸化ケイ素という形で地球上に大量に存在します。ガラスの主成分も二酸化ケイ素です。地球上の地表付近に存在する元素の割合を表す指標としてクラーク数というのがあります。クラーク数1位は酸素なのですが、第2位はシリコンです。すなわち、シリコンは地球上で2番目に多い元素なのです。従って、太陽電池材料は地球上に半無限に存在すると言っても過言ではありません。

LinkIconクラーク数とは?

2.エネルギーの面から

  もし、日本のすべての建物や施設に太陽電池が設置されると、日本中の使用電力の約25%をカバーできます。現在の日本の一日の電力使用量は約2500ギガワット。これを太陽電池だけでカバーしようとすると、約6510km2の面積が必要となります(東京都3つ分程度の広さ)。

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太陽電池動作原理.png  太陽電池は半導体から作られています。もっと言うと、p型の半導体とn型の半導体が接合したもの(pn接合)により構成されています。光の照射により、電子と正孔が半導体内に生成します。ここで、電子はn側の金属へ、正孔はp側の金属へ拡散します。これが、電流となり、電気エネルギーとして外部に取り出すことができるようになるわけです。

LinkIcon半導体とは?
LinkIconpn接合とは?

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  その太陽電池ですが、主に材料の違いによって色々に分類することが出来ます。以下に大まかに分類した図を示します。

sol01.jpg

 バルク太陽電池とは現在、太陽電池市場のほぼ9割を占める結晶シリコン系太陽電池のことです。屋根の上に設置されている太陽電池はまずこれでしょう。製造方法は、結晶シリコンのかたまりを製造し、それをスライス加工してから太陽電池構造を作製します。変換効率は比較的良いのですが、シリコンのかたまりを製造する際に高温を必要とすることや厚い膜厚(数百μm)が必要となるため、製造コストが高くなる傾向があります。このことから、基板の作製プロセスを改良したり、膜厚を薄くすることで、製造コストを下げようと言う試みがなされています。

 一方、薄膜系太陽電池は数10μm~数μm以下の厚さの太陽電池で、材料費を抑えることができ、太陽電池の低コスト化を可能にします。基板にはガラスなどを使用し、その上にプラズマCVDといった方法で発電層を形成します。現在の研究開発では、変換効率の向上がキーとなっています。

 太陽電池のいっそうの普及のためには、低価格化+高効率化が必要となります。材料費やプロセスコストの点から、現在はバルクから薄膜へと研究・開発は移行してきています。従来技術の応用がきくシリコン(Si)系、高い変換効率が期待できるカルコパイライト系、簡易な製造プロセスで作製が可能な色素増感・有機半導体太陽電池。それぞれ得意な分野、他にはない特徴などを持っていますが、本研究室では図中で赤文字になっている薄膜太陽電池のなかのSi系とカルコパイライト太陽電池の研究を行なっています。

 薄膜シリコン系太陽電池では、アモルファス(非晶質)Siが多く用いられてきましたが、このアモルファスシリコンは太陽光を浴びることで性能が劣化してしまう(光劣化)という欠点がありました。そこで本研究室では光劣化がないと言われている微結晶Siを用いた太陽電池の研究を行なっています。

 カルコパイライト薄膜太陽電池は、ここに来て、昭和シェル石油、本田技研工業などが市場投入するなど、実用化の段階に入っています。薄膜ながら、高効率な太陽電池が期待できることから、更なる低コスト化、簡易な作製プロセス、環境への負担の小さな材料の開発などが行なわれています。

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 日本では、太陽電池を将来の重要なエネルギー供給源として位置づけて、国を挙げての研究開発支援を行っています。その中心となっているのが「独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構」(通称:NEDO "http://www.nedo.go.jp/")です。NEDOのHPには、太陽電池に関する詳しい資料や、現在行なっている研究・開発についての情報が載っています。

 このNEDOによる、日本の太陽電池開発のロードマップというものがあります。これは、太陽電池が火力発電などの集中発電システムと肩を並べるようになるためには、今後どのような目標を持って研究・開発を進めていく必要があるかを考察したものです。

  2009年6月8日、NEDOは新たな太陽光発電研究開発ロードマップPV2030+を公開しました。この中では、これまでのロードマップで定められていた研究開発の目標年を前倒しし、現在、急成長する太陽光発電市場を取り巻く国際情勢の急激な変化に対応したものとなっています。海外貢献や国際競争力確保も視野に、国や産業界による太陽光発電の利用拡大への取り組みも考慮されています。また、2050年までには新たな概念を導入した次世代太陽光発電技術を実用化することも含まれております。本研究室においても量子ドットを導入した次世代太陽電池材料の開発を進めていきます。

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